Little Glee Monsterにとっての2021年前半は、グループ始まって以来最大の危機を迎えたターニングポイントになった。ご存知のとおり、前年12月に芹奈が休養を発表し、以降かれん、MAYU、manaka、アサヒで活動を継続。「日本レコード大賞」や「NHK紅白歌合戦」をはじめとする年末の大型音楽番組出演を4人で乗り切った。この形は2021年に入ってからも続き、初のベストアルバム『GRADATI∞N』発売を経て1月27日からは全国アリーナツアー『Little Glee Monster Arena Tour 2021“Dearest”』を敢行。日本武道館公演からスタートしたツアーは、依然猛威を振るう新型コロナウイルス感染拡大の影響により、当初予定されていた広島公演と仙台公演は中止となってしまったが、大阪公演と名古屋公演は実施され、さらに4月にはさいたまスーパーアリーナ2DAYS公演も追加された。このツアーでは芹奈の不在を乗り越え、4人それぞれが「今自分にできること」と向き合うことで、1人ひとりのスキルに磨きをかけることに。歌唱面、トーク面、そしてライブ演出面などさまざまな側面で個々が力を発揮し、最終公演の頃には自信に満ちた4人の表情を客席から確認することができた。

そのさいたまスーパーアリーナでの2公演で、アンコールに初披露されたのが「君といれば」だった。メンバーから芹奈への思い、そして今は会えないでいるファンへの思いが形となったこの曲は、当初から「5人で歌ったときが完成形です」とメンバーが語っていたが、4人で歌うからこそ強く響くものがあったのも事実。のちに、この曲が6月9日に配信リリースされることがアナウンスされると、大きな反響が沸き起こった。さらに、芹奈を含む5人で録音した「REUNION」の6月22日配信リリースと、6月28日から始まる全国ホールツアー『Little Glee Monster Live Tour 2020→2021 ＞BRIGHT NEW WORLD＜』への芹奈参加を発表。のちに公開された「君といれば」MVでは5人の再会シーンがフィーチャーされたほか、グループにとって音楽的新境地を伝える「REUNION」MVでは、リトグリが新たな領域へ到達し始めたことを映像でも表現し、話題を呼んだことも記憶に新しい。

この「REUNION」を制作する上で、芹奈は自身の脳内にあった映像イメージおよびそこで鳴っている音を具体化するのに苦心したという。別ページに掲載された、現在メディア稼働を行っていない芹奈へのテキストインタビューの中でも語られているが、「高井息吹さんの『幻のように』をなんとなく再生した瞬間、鳥肌が立つくらい自分の中にあった映像と音がぴったり合って」、その結果、高井息吹氏に楽曲制作を依頼することになった。芹奈が仮歌を歌ったこの曲のデモを聴いたMAYUは「そのときに私たちも芹奈の歌声を半年ぶりぐらいに聴いて。だから、率直に芹奈の歌声が聴けたことがうれしかった、というのがまず最初にありました」と語り、アサヒも「今までにない不思議の曲だなと思って。『これをメンバー全員で歌ったらどうなるんだろう？』とイメージを浮かべながら、この雰囲気に合わせた歌い方を探りました」と当時の心境を明かしている。

直接的なアンサーではないかもしれないが、「君といれば」と「REUNION」の間には強いつながりが感じられる。それはメンバー自身も感じているようで、かれんは「2曲セットという感覚は私たちもあるので、アルバムでもこうやって並べて収録していますし、並ぶことによっても両方の良さが引き立つところはあるのかなと思います」と自身の考えを口している。

この2曲を携え、名古屋からスタートした全国ツアー『Little Glee Monster Live Tour 2020→2021 ＞BRIGHT NEW WORLD＜』。筆者はその初日公演を会場で観覧したが、最初こそ緊張からくる若干の硬さがあったものの、メンバーの日常を切り取ったかのようなMCやリラックスできるステージセット演出と相まって、徐々に肩の力が抜けたパフォーマンスを提示。苦難を乗り越え成長した、かれん、MAYU、manaka、アサヒと、そんな4人と一緒に歌える喜びを噛み締めながらライブを楽しむ芹奈の姿は、今日まで忘れられない姿として目に焼き付いている。この初日公演を振り返り、manakaは「始まる前はちょっと緊張もあったんですけど、でも5人いるという安心感、ホールという距離感でお客さんがいてくれる安心感、2つも重なって思っていた以上に楽しくできました」と前向きな意見を寄せている。

『GRADATI∞N』発売から約8ヶ月を経て、いよいよリトグリの新作ミニアルバム『re-union』がリリースされる。ここには配信リリース済みの「君といれば」「REUNION」に加え、新たに5人で歌った“完成形”「君といれば -complete ver.-」、『Little Glee Monster Live Tour 2020→2021 ＞BRIGHT NEW WORLD＜』ツアー初日のオープニングを飾った「VIVA」の名古屋ライブ音源、東京オリンピックで活躍した女子卓球の伊藤美誠選手へと贈られた新曲「Whenever you call」の5曲を収録。既発曲を複数含む異色の内容だが、激動の2021年上半期をそれぞれの場所から全力で駆け抜けた5人のリアルな姿が凝縮されており、ここからさらに前進を続けるリトグリにとって音楽的にもひとつのターニングポイントになる1枚と言えるのではないだろうか。

1曲1曲はバラバラの個性を持つ楽曲たちは、どこかリトグリ5人の姿とも重なる。と同時に、どの曲からも「5人で歌えることに対する喜び」がダイレクトに伝わる。今このタイミングだからこそ完成した本作は、彼女たちにとってもっともドキュメンタリーチックな作品集であり、『re-union』という強い意思が込められた「新たな第一歩」でもある。彼女たちの決意を、ぜひこのミニアルバムから受け取ってほしい。

（文／西廣智一）

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